本物の木というのは、いつまでたっても生き続けています。
時間が経つと、曲がったり縮んだりするのも、木としてもともと持って生まれた性質で、伐採され製材された後でもその性質は消えません。
製材した木が同じ状態でいてくれないことを、私たち木を扱う職人は「木が動く」と言います。でも、それは人間の勝手な言い分で、切られても乾燥してもいつまでも生きている証拠で、それが木の本来の姿であり、木の一番良いところなんです。
しかし、木でお仏壇を作る場合、材料となる木が同じ状態でなく、動いてしまうということは、大変困ります。
木にしてみれば動くことは本質的なことでありながら、あまり動いてしまうとお仏壇には向きません。そういうわけで、なによりも木を選び、木の性質を把握して使うことに最も気を遣っています。
平らなところに一本だけ生えていて、朝早くから夕方遅くまで、まんべんなく日が当たる木は、全体的に均一で素材的にも安定した木といえます。
でも、そんな木は稀で、普通は森でも林でも、いろんな木が競争するように太陽に向かって一生懸命に伸びようとして、凄まじい生存競争が繰り広げられています。
隣の木の上に曲がりくねって枝を伸ばしたり、蔓草が巻きついてきたり、斜面からずり落ちないようにへばりつくように根を伸ばしたり、台風の強い風雨にさらされたり、重たい雪が載っかったり、地形だけでなく天候や他の植物も木の性質に影響を与えます。
木は外から見ただけでは分かりにくいですけど、大自然の中で生き延びていくために、年がら年中、身体中の組織を総動員して、あらゆる条件に適合するようにがんばっているのです。過酷な状況に遭えば遭うほどがんばらなければならないので、がんばった分どこかにしわ寄せみたいなものが出てしまいます。均一でなくなる部分が多い木を、私たち職人はよく「癖」が多い木と言います。
癖はその木が一生懸命生きてきた証拠であり、勲章でもあります。そういう癖の多い木ほど、その生命力を讃え、よく頑張ったと褒めてあげたくなります。
癖の多い木は扱いづらいですが、木に癖があるのは大自然の摂理で仕方のないことです。ですから、成長した木というのは、その木が望む望まないにかかわらず、いろんな癖を持ってしまっています。
そういった木の癖をよく知り、良い部分を引き出し、うまく生かしてやるのが私たち職人の大切な役割なのです。
人間と同じように、木も一本一本それぞれ性質が違います。
新しい木と出会うたびに、どうやってつきあっていこうかと心を砕き、私たち職人と木の真剣勝負の格闘が始まります。ですから、木の性質を把握しながら良い部分を引き出し、お仏壇の中にそれらがうまく蘇ったときの喜びは格別なものがあります。
本物の木というのは、いつまでたっても生き続けています。
その木の命を活かしてやりたいという気持で作ったお仏壇が、人の心を癒し、これからの人生の心の支えになれば、私たち職人にとって、これほど喜ばしいことはありません。
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